私は現在、ピラティスやコンティニュアムといった運動療法やソマティック教育やハンズオンヒーリングという補完医療の手技の精度を上げる、もしくは質を深める目的でカナダの London College of Osteopathy and Health Sciences でオステオパシーの勉強を続けています。仕事や育児をしながらの学びはゆっくりの進度ですが、自分のペースで進めることができるコースなので大変助かっていますし、体に関する学びはバレエ少女だった頃から大好きな分野ですのでやはり、興味は尽きません。
オステオパシーの原理について触れている記事がひとつ必須の読み物となっていまして、健康をサポートするセッションを提供する者として大変共感いたします。自分自身のメモも兼ねてここにシェアさせていただきたいと思います。
身体をひとつの単位として捉える
「病気に対応するとき、特定の臓器やシステムが単独で働くことはない。 循環系、神経系、内分泌系、免疫系など、身体全体が一丸となって、病気の身体への影響を克服しようとするのである。 体全体に正常なバランスに戻ったときにはじめて、病気の緩和が真に達成されるのである。
しかし、スティル医師（オステオパシーの創始者）のホリズムの概念は、人体をひとつの単位とする考え方をも超えて、肉体、精神、スピリットの全体を含んでいた。 スティル医師は、医師が治療を必要とする患者に直面したとき、人間のあらゆる側面（身体的、精神的、感情的、精神的、心理的、環境的、その他）を考慮に入れなければならないと強く信じていた。 したがってA.T.スティルにとってホリズムとは、他の診断や治療法に対してオープンである以上のものであり、病気の診断や治療計画を立てる際に、医師が人間の全体性を考慮する患者へのアプローチであった。」
自己調整システムと自己治癒システム
「それでもなお、身体はそれ自体の内に、健康であるために必要なもの、あるいは病気になったとしても、病気を克服して健康な状態に戻るために必要なものをすべて内包しているとスティル医師は信じていた。 オステオパシー医の仕事は、身体が病気を克服し健康を維持するために、自己治癒力を活用するのを助けることであった。」
構造と機能の関係
「オステオパシーの3つ目の基本原則は、構造と機能は相互に関連しており、筋骨格系は他の身体システムの変化を反映し、また変化をもたらすことができるということである。スティル医師は、健康と病気における筋骨格系の役割を非常に重要視していた。構造と機能の相互関係は、オステオパシー医学の最もユニークな側面のひとつである。
A.T.スティルによる、筋骨格系が健康と病気において重要な役割を担っているという認識は、革命的な概念であった。 操体法（オステオパシーで用いるマニピュレーション）を用いることで、しばしば薬物や手術をほとんど、あるいはまったく使わずに、患者の病気からの回復を助けることができるという彼の発見は、医学の実践に対する彼の最も重要な貢献のひとつである。 構造と機能の相互関係に関するこの知識と、オステオパシー・マニピュレーションのテクニックを駆使して、独自の診断と治療のシステムに関する知識を持ち合わせている。 しばしばこのアプローチだけで、患者が病気から回復するのを助けることができる。 また、薬物療法をほとんど、あるいはまったく使わずに回復できることもあり、場合によっては手術を避けられることもある。」
オステオパシーの信条
「人は身体、心、精神のダイナミックな相互作用の産物である。
このダイナミックな相互作用の固有の性質が、個人の健康維持と病気からの回復の能力である。
内在的、外在的な様々な力が、この内在的な能力に挑戦し、病気の発症のきっかけとなる。
筋骨格系は、体が先天的に持つ回復させる能力に大きく影響する。これらの信条から、オステオパシー医は患者ケアのための一定の原則を導き出す。 これらの原則は、1）医療の中心は患者であること、2）自分の健康に対する第一義的な責任は患者にあること、3）患者ケアのための効果的な治療プログラムは、上記の信条に基づくものである、と述べている。
オステオパシー医の目標は以下の通りである。
・利用可能なエビデンスに基づいたアプローチを用いて、疾患の根本原因を探り、対処する。
・患者の自己調整能力と自己治癒能力を最適化する。
・健康増進と疾病予防に重点を置いた、個別の患者管理計画を提供する。
参照元 Osteopathic Principle and Philosophy by Raymond J. Hruby, DO, MS, FAAO
「構造と機能の関係 オステオパシーの3つ目の基本原則は、構造と機能は相互に関連しており、筋骨格系は他の身体システムの変化を反映し、また変化をもたらすことができるということである。」ここがやはり、オステオパシー特有の考え方、アプローチだと感じます。
アメリカではオステオパシーはオステオパシー医、つまりオステオパシーの訓練を追加で受けた医師が行うものとなっています。上記の文献はそんなアメリカ合衆国でのオステオパシーを例に挙げているので、医師以外の人間がマニュアル・オステオパシーの処置を施す場合とは詳細が異なるわけですが、例えばクライアントが何かしらの炎症を患っていたとします。医師以外の人間が薬剤の処方をすることはしませんので、マニュアル・オステオパシーでは手技や動きの提示により筋骨格系を整えることになります。筋骨格系を整えることにより筋肉や骨、そしてそれを支える靭帯や軟骨、膜や神経等の結合組織といった「構造」以外にも、記事にあるように、循環系、神経系、内分泌系、免疫系など「機能」に分類されるものも含めた体のすべてがその影響を受け、炎症からの回復を助けることになります。怪我や病気からの回復を、筋骨格系を整えることで助けるというアプローチです。また、体が行う活動、人間関係や社会活動を含む人間の営みもまた、影響を受けることになります。
もちろんすべてのケースで薬や手術が不要ということではありませんし、日本ではオステオパシーは医師以外の者でも行えるため、当店では医療機関と並行してセッションを受けていただくことをお勧めしています。とはいえ、体の内に体が癒えるためのリソースが備わっているという考えは、ハンズオンヒーリングの考え方とも完全に一致するものであり、このリソースが豊富に使える状態になる手助けをするのが私達の仕事なのだということを、この記事を読み、再確認します。
以下、原文より抜粋
The unity of the body
“when responding to an illness, the specific organ or system does not operate alone. The entire body by way of the circulatory, nervous, endocrine, and immune systems, is brought into action in a concerted effort to overcome the bodyside effects of the illness. Only when the whole body has returned to its normal balance has the alleviation of illness truly been achieved.
Still’s concept of holism, however, went beyond the idea of the human body as a unit and included a holism of body, mind and spirit. Doctor Still strongly believed that all pertinent aspects of the human being (physical, mental, emotional, spiritual;, psychological, environmental, and others) had to be taken into consideration when the physician was faced with a patient needing treatment. Thus, for A.T. Still, holism was more than an open-mindedness to other forms of diagnosis and treatment. Rather, it wa an approach to the patient that required the physician to consider the totality of the human being when diagnosing illness or planning treatment.”
Self regulatory and self- healing systems
“Still believed that the body contained within itself all that it needed to either be healthy, or, if ill, all that it needed to overcome the illness and return to a healthy state. The job of the osteopathic physician was to help the body utilize its own self-healing mechanisms to overcome disease and maintain health.”
The realationship between structure and function
“The third basic osteopathic principle is that structure and function are interrelated, that the musculoskeletal system can reflect changes in and can produce changes in other body systems. Doctor Still placed great importance on the role of the musculoskeletal system in health and disease. The interrelationship between structure and function is one of the most unique aspects of osteopathic medicine.”
“A.T. Still’s recognition that the the musculoskeletal system has an important role in health and disease was a revolutionary concept. His discovery that the use manipulative methods could assist the patient in recovering from illness, often with little or no use of drugs or surgery, is one of his most important contributions to the practice of medicine. Using this knowledge of the interrelationship of structure and function, and the techniques of osteopathic manipulation, the DP has knowledge of a unique system of diagnosis and treatment. This approach alone can often assist patients in recovering from illness. At other times, it allows for recovery with little or no medication and in some cases may help the patient to avoid surgery.”
Osteopathic tenets
“・A person is the product of dynamic interaction between body, mind and spirit
・An inherent property of this dynamic interaction is the capacity of the individual for the maintenance of health and recovery from disease
・Many forces, both intrinsic and extrinsic to the person, can challenge this inherent capacity and contribute to the onset of illness
・The musculoskeletal system significantly influences the individual’s ability to restore this inherent capacity and therefore to resist disease processes”
“From these tenets the osteopathic physician derives certain principles for patient care. These principles state that 1) the patient is the focus for healthcare; 2) the patient has the primary responsibility for his or her health; and 3) an effective treatment program for patient care is founded on the above-mentioned tenets.”
“The osteopathic physician’s goals are to:
・Seek out and address the root canse(s) of disease using available evidence-based approaches
・Optimize the patient’s self-regulating and self-healing capacities
・Provide an individualized patient management plan that includes emphasis on health promotion and disease prevention”