姿勢を保っているのは「筋力」ではなく「神経の出力パターン」です。
骨格が重力線上に整っていない状態が長く続くと、体を倒れないように支えるため、一方の筋肉(主動筋)は常に収縮し続け、反対側の筋肉(拮抗筋)は引き伸ばされたまま張り詰めた状態になります。
つまり、一方が縮みきり、もう一方が伸びきった“緊張の拮抗状態”が慢性化してしまうのです。いわば、両側が常に喧嘩をしている状態です。
このとき筋トレを行うことで過伸長している筋肉を短くし、姿勢を正そうとすると、過伸長していた側の筋肉を主動筋として収縮させることになります。
しかし残念なことに、元々過収縮していた側の筋肉は長年の緊張パターン化によって柔軟性を失っており、すぐには伸びることができません。結果として両側の筋肉が同時に収縮し、関節の動きが狭まり、体は「硬さに挟まれた」状態になってしまいます。
見かけ上は筋力がつき、一見姿勢が整ったように見えることもあります。
しかしそれは、力で固めた均衡であり、神経が再教育されたときに生まれる「無駄な力が抜けて立てる整合」とはまったく異なる安定です。
「筋トレで整ったように見える姿勢は“固定された形。
神経から整った姿勢は“動ける形。」
「筋肉で作る姿勢は“止まっている安定。
神経で作る姿勢は“動きの中の安定。」
見た目は似ていても、一方は力で立ち、もう一方は重力に委ねて立っている。
本来、筋肉が健全に働くためには、「一方が収縮する時、反対側が弛緩する」という相互抑制の反射が正しく機能する必要があります。
しかし、慢性的な緊張状態では神経のこの抑制システムがうまく働かず、両筋群が同時に緊張を続ける「共収縮パターン」が固定化されます。
さらに、筋紡錘というセンサーが過敏化し、伸びることを危険信号と誤認して反射的に筋肉を収縮させてしまいます。これが、いわゆるガンマループの過活動です。
こうした状態で「鍛える」ことを続けても、神経パターンの誤作動は残ったまま。
筋肉の伸縮性や関節の自由度はむしろ低下し、結果的に姿勢の歪みや痛みを助長してしまいます。この悪循環は、長年クラシックバレエやダンスの技術向上のために自分自身が陥ってきた負のループです。
SenseBodyが大切にしているのは、この「神経の誤作動」が整うことを手助けすること。
パンディキュレーションのように意識的に収縮してからゆっくり解放する動きは、相互抑制を再起動し、ガンマループの過活動を鎮め、神経が「安全に緩んでよい」と再学習する手助けをします。
この神経を介した再教育が進むと、筋肉は再び柔軟に伸び縮みし、骨格は自然と重力線上に整っていきます。
筋肉を鍛える前に、まず「神経を再教育する」こと。
これこそが、真に持続する姿勢改善としなやかな身体を生み出すための第一歩です。
“Stability within motion. A body that stands with gravity, not against it.”
— SenseBody: 「動きの中の安定を。重力とともに立つ身体を。」