神経が整い覚えると、姿勢は新しい軸を手に入れる。
私たちは筋肉を動かしているようでいて、実際には神経の選択によって立ち、歩き、呼吸しています。
SenseBody Axisは、頭・腰・足首・肩という4つの部位を通して、神経が再び「自然な軸」を選び取るよう設計されたプログラムです。
姿勢改善や体の再教育において「頭から整える」ことには、神経生理学的な意味があります。
本稿では、その順序の理由と、SenseBodyが大切にしている“神経の学び方”についてお伝えします。

「頭部を最初に行う」ことの神経生理学的利点
頭部の緊張をゆるめる動きや呼吸の変化は、脳幹レベルの自律神経系に穏やかな影響を与えると考えられています。これにより、防衛的に身体を固める反応が弱まり、落ち着いていながら、身体の感覚に耳を澄ませやすい状態を取り戻します。SenseBody Axisでは、この「頭から整える」段階を通して、副交感神経が働きやすい静かな基盤をつくることを目的としています。
姿勢制御は、頭位 → 眼位 → 前庭 → 体幹・下肢という順で情報が流れます。
頭部の固有感覚(耳石器や頸部筋紡錘)は、立位バランスの最上流にある入力系です。最初に頭部を整えることで、その下に連なる運動出力(骨盤〜足部)の学習がスムーズに進みやすくなります。
「腰→足首」を最低限の必須ラインとする理由
仙腸関節と重心制御
仙腸関節は出産などの例を除いては、ほぼ動かない関節と思われがちですが、実際には呼吸や深層筋の張力によって数ミリ単位の可動性を持っています。このわずかな動きが、重力に対して柔軟に体重を受け止める鍵です。この可動性が失われると、荷重分配が硬直化しやすくなり、再教育された頭部や脊柱の情報が末端まで十分に伝わりにくくなることがあります。腰部セットは、感覚座標や姿勢基準を形成する頭部や頸部の上位の感覚入力と、姿勢反射や荷重分配、そして実際の体重を支持し運動させる足首や足底の下位の運動出力を結ぶ「統合層」として、神経可塑性の再教育を支える要です。この要に、柔軟な対応力があることが全身の骨格が柳のように適応性の高い動的なものであるためには欠かせません。
足首セットの個体差的重要性
長年の運動習慣や怪我によって下腿や股関節にねじれがある場合、足首(距腿関節と距骨下関節)の受容器の感度が鈍くなっていることがあります。これは、成長期に過度なバレエトレーニングを行ってきた私自身の身体にも現れていた傾向です。その結果、立位姿勢の反射が歪み、「地面を押す」「支える」といった反射性動作が正確に働かなくなります。この感覚を再教育する足首のセットの重要性は、個体差はあれど軸の最終調整層として欠かせません。足関節が微細に軸を変えるとき、足関節の靭帯と関節砲内(距骨・脛骨・腓骨・足関節周囲の固有感覚受容器群)の受容器が反応し、感覚神経を経由して前庭、小脳や延髄とバランスの調整を行います。結果的に視覚に影響を与え、垂直方向の軸が安定するという反応が全身で起こるため、足首の軸は全身の姿勢にとって非常に大きな役を担っています。
肩セットが「任意」となる理由
頭部・仙腸関節・足首が神経的に整合し、重力線が通ると、肩甲帯は上位胸郭(T1〜T4)のトルクによって自然に整列します。
詳しく書き出してみると、次のようになります。
1. 頸部固有感覚と前庭情報により、「重力に対して頭部がどの方向にあるか」を検出します。この「重力軸に対する基準線」が姿勢全体の座標軸になります。
2. 頭部からの重力ベクトルと足底からの反力ベクトルが交わる「ハブ」が仙腸関節です。仙腸関節の微細な可動性と腸腰筋・多裂筋・骨盤底筋のテンションバランスによって、脊柱と下肢を結ぶ運動伝達の中継点が安定します。
3. 足底圧と距骨の微小な動きが姿勢反射の末端出力です。ここでの足底や足首の安定が得られると、重心は自動的に後根神経節、脊椎、前庭、小脳、延髄、頸筋、眼球、耳石を介して、「軸が通る」状態になります。
4. その結果、肩甲帯が自然に整列します。特に僧帽筋上部、斜角筋、小胸筋などの筋のトーヌスが下がるため、肩甲骨が「引き下げられる」のではなく「吊り上がらない」状態になります。
つまり、肩を直接「操作」しなくても、頭・骨盤・足首の調整によって上肢の配置が自動的に再整合されるケースが多いのです。この場合、肩のセットは行わなくていい場合もあります。ただし例外もあります。呼吸筋(斜角筋・小胸筋)が過剰に働く方や、ストレスで呼吸が浅くなりやすい方には、肩のセットを残すことで呼吸系と迷走神経経路の同期を取り戻すサポートになります。
「学ぶ → 実践する → 神経が安定する」
SenseBody Axisでは、4つのセットを順に学び(8週間)、その後、神経の可塑性が安定するまでの期間(目安3か月)、ご自宅で実践を続けていただきます。
焦る必要はありません。神経の学びは、時間とともに静かに定着していきます。
繰り返しと注意の積み重ねが、新しいパターンを選び取り、やがてそれが“当たり前の姿勢”として身体に根づきます。
そのとき、身体は力みなく立ち、呼吸は深く、
自然に軽やかな軸が通るようになります。
それが、SenseBody Axisが目指す「神経から整う姿勢」です。
“Stability within motion. A body that stands with gravity, not against it.”
— SenseBody: 「動きの中の安定を。重力とともに立つ身体を。」