
SenseBody Axis の「足のセット」で行う立位のAxis Pliéというエクササイズがありますが、こちらを繰り返していると、ふと視界が明るくなったり、
色の奥行きが増したように感じたりすることがあります。
しばらくこの現象を自分の体験を通して確認していたのですが、ようやくこのことに触れている論文に出会いました(私の中では小さく叫びたいほどの喜びが溢れたのはいうまでもありません笑 論文はこの記事の下部に紹介させていただいきます)
さてこの現象は気のせいではなく、神経の反応です。
足首のほんの数ミリの可動と靭帯の滑りが、
前庭核と視覚系を通して「世界の見え方」を変えるのです。
SenseBodyでは、この現象を foot–vestibular–visual integration(足―前庭―視覚の統合)と呼ばれる
神経ループの働きとして捉えます。
距骨の動きが脳へ伝わる仕組み
距骨のわずかな転がりが「頭の方向」を変える
距骨が後方へ転がるとき、足関節の靭帯と関節砲内(距骨・脛骨・腓骨・足関節周囲の固有感覚受容器群)の受容器が小さな伸張を感知します。
こうした情報は脊髄後索(脊髄の後ろ側)を経由し、小脳と前庭核に伝えられます。
前庭核は「頭が今どの方向を向いているか」を常にモニターしており、距骨からの情報によって微調整が行われます。
結果として、頭のわずかな傾きが修正され、眼球の水平性と焦点が整います。これが、足首の関節に微細な変化が生じたときに感じる、「見え方」の変化の理由のひとつです。
足関節の角度変化(例:足首の関節にかかる負担を、腰部から連なる大きな筋肉群等に働きかけた結果変化さた際のプリエの屈伸時)
↓
距骨周囲靭帯・関節包内の機械受容器が反応
↓
体から延髄へ感覚情報を伝える後根神経節(Dorsal Root Ganglion, 感覚神経細胞の集まり。背中側) → 脊髄後索 → 小脳・延髄へ入力
↓
前庭核が小脳とのやり取りで統合
↓
頭部姿勢の微調整(頸筋・眼球運動・耳石器反応とバランスを取る)
↓
視覚情報・頭位感覚との統合によって垂直方向の安定化
視覚が明るく感じられる理由
生理学的には3つの層で変化が起きる
- 神経調整層
距骨からの入力により前庭核が安定化し、視覚野へのノイズが減少。
→ コントラスト感度が上がり、視界が明るく感じられる。 - 眼球運動層
前庭動眼反射(VOR、警戒モード)が正常化し、視線のブレが減少。
→ 視野が広がり、対象との距離感が鮮明になる。 - 自律神経層
床反発と足底感覚が副交感神経を介して網膜血流を増加。
→ 光の過敏さが減り、色彩が深く感じられる。
「足が動くことで世界が明るくなる」という体験は、
足関節・小脳・視覚皮質が協調して働いた結果です。
論文紹介:Ivanenko & Gurfinkel (2018)
さてこちらが私が感動を隠せなかった論文です。
Ivanenko, Y. & Gurfinkel, V. (2018).
Human postural control and movement: foot–vestibular–visual interactions. Physiol Reports.
この研究では、人間の姿勢制御が「足・前庭・視覚」の三方向入力の統合によって成り立つことが報告されています。
足底や距骨からの固有感覚刺激が前庭核に送られ、
さらに視覚皮質で空間認識の補正が行われる。
Ivanenko氏は「足は単なる支持器ではなく、脳の平衡系の一部である(喜喜喜」と述べています。
SenseBodyのAxis理論と一致する見解です。
「視覚皮質で空間認識の補正が行われる」ーSenseBody Axisの最後には、Integral Walkといって統合のために歩くという作業があるのですが、私は個人的にこの時間が至福の時間です。空間の左右、そして上下に対して自分がどうあるのか。この開かれた、日々新しい感覚は、なんとも言葉では形容し難いのですが、「今」を全身で堪能する、そんな静かな喜びと、表現できるかもしれません。
SenseBody的まとめ ― 足が「頭を支える」
足は、姿勢を作る「構造」ではなく、
神経系に重力の方向を教える「センサー」です。
Axis Pliéでは、頭頂―仙骨―距骨の3点がひとつの軸として働き、
距骨の微細な転がりが前庭核を通して視覚へ影響します。
その瞬間、世界のコントラストが変わる。
足から見える世界が、ほんの少し明るくなる。
それが、SenseBodyの再教育が起こったサインです。
まずは、足裏がセンサーがたくさん集まった場所だと認識し、朝起きがけの第一歩、今日という1日の始まりを足裏から頭頂まで姿勢を通して伝える第一歩を、無意識ではなく、実感してみるのは大変おすすめです☆
参考文献
Ivanenko, Y. & Gurfinkel, V. (2018). Human postural control and movement: foot–vestibular–visual interactions. Physiol Reports.
Horak, F. (1996). Postural orientation and equilibrium: vestibular contributions. Handbook of Physiology.
Kheradmand, A. & Winnick, A. (2017). Visual–vestibular integration and perception of self-motion. Front Neurol.
McGlone, F. et al. (2014). C-tactile afferents and affective touch: Implications for movement and interoception. Neurosci Biobehav Rev.
“Stability within motion. A body that stands with gravity, not against it.”
— SenseBody: 「動きの中の安定を。重力とともに立つ身体を。」