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交互収縮による神経バランス調整ワーク ― 相互抑制

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SenseBodyでは、さまざまな神経作用を活用し、骨の周囲組織の弛緩、骨の位置の自然な調整、そして神経の再教育を行います。

なかでも相互抑制(reciprocal inhibition)という神経作用は、動きの中で利用できる非常に重要なメカニズムです。この作用を理解したうえでエクササイズを実践すると、結果がよりポジティブに現れます。

ここでは、SenseBodyで行う交互収縮のプロセスを3つの段階に分けてご紹介します。

速い交互運動は、神経反射を呼び覚ます

①反射的相互抑制 ― 「動きを開く」フェーズ

速いテンポで主動筋と拮抗筋を交互に動かすと、脊髄内でIa抑制性介在ニューロン(Ia inhibitory interneurons)が働き、拮抗筋のα運動ニューロンの興奮が一時的に抑制されます。
これは「相互抑制」と呼ばれる反射で、余分な筋緊張を瞬間的に解除し、神経回路の「切り替え能力」を高めます。
SenseBodyではこのフェーズを「神経を呼び起こす準備」として位置づけています。心地よく、軽く、動いてみル。
ここでの目的は力を出すことではなく、反応性を取り戻すこと。
短い交互運動を数回行うことで、神経の通り道を開き、
このあと行う再教育フェーズへの感受性を高めます。

ゆっくり動くほど、脳が変わる

②「神経を再教育する」フェーズ

速い動きで開いた神経回路を、今度はパンディキュレーションというソマティクス特有の動きで再教育します。
主動筋を意識的に軽く収縮し、呼吸に合わせてゆっくり弛緩へ。
このとき、筋の長さをモニタリングするγ運動ニューロン系が再調整され、筋紡錘の感受性が正常化します。
筋紡錘の発火閾値が下がり、過剰なα活動(持続緊張)が抑制されます。
皮質レベルでは、体性感覚野(S1)と一次運動野(M1)が協調し、
筋トーンを再設定する新たな神経回路が形成されます。
力を抜くという運動を脳に学習させる、それがこの段階の目的です。

「体が自ら整う時間」

③動きの終わりの時間。この時に神経が体を再構築している

パンディキュレーションの直後、
体を止め、呼吸をひとつ、ふたつ。
この静止の中で脳は「再設定」を行っています。

この静止の中で、脳は感覚情報を再統合しています。
筋紡錘や腱からの新しい信号が体性感覚野(S1)に送られ、
島皮質・小脳・前庭系が共同して“重力下での最適バランス”を再設定していきます。

この瞬間、私たちは「休んでいる」のではありません。
神経系が、動きと感覚を統合しなおしているのです。クライアントさんを眼前にし、筋のトーヌスが変化していくこの時の様子は静かながら、大変パワフルな変化です。
SenseBodyではこの時間を
Integration phase”=再教育の統合として位置づけています。

神経の相互抑制という作用を利用して、動きを通して弛緩を促し、
骨が本来の重心線に沿って「楽に立つ」ことを助ける。
神経の仕組みを理解して、動きを「身体への最良の薬(medicine)」とする。
それがSenseBodyのエクササイズが目指すところです。


“Stability within motion. A body that stands with gravity, not against it.”

— SenseBody: 「動きの中の安定を。重力とともに立つ身体を。」